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仕事が成し遂げられる場所

ジェレミー・ハンター・ルービン  /  2021年2月4日  /  読み終えるまで23分  /  アクティビズム

上空から見たベアーズ・イヤーズ国定記念物のコームウォッシュ。この地域には無数の文化的資源および遺物があり、トランプ大統領による削減が支持された場合、それらの多くは国定記念物としては保護されなくなる。Photo:Jeremy Hunter Rubingh

ソーシャルメディアでは、公有地保護の活動が楽しそうに見えることが多々あります。山や谷に情熱的に集い、バックドアを開けたバンに座って夜明け前にお茶をすすっていたり、信じられないほど美しいキャンプ地で温かい寝袋にくるまっていたり……彩度フィルターを上げるのを忘れないで。

しかし保護活動の大半は蛍光灯に照らされた会議室で、まずいコーヒーを飲みながら、長時間を費やしています。感情、生活の糧、複雑な歴史に包まれた不可能な議題。意見の食い違いを調整しながら、私たち皆が愛するもの、自分たちの足元にある実際の国、土壌、地質、森林、ヤマヨモギ、水、野生動物を守るための方法を探しているのが現実です。そしてそのほとんどの場合、このすべてが先住民の遺産と痛ましい過去と絡み合っています。米国土地管理局(BLM)の土地、国有林、国立公園と記念物、原生地域、ワイルド&シーニック・リバー、国立保護地域、国立レクリエーション地域、国立野生生物保護地区、国立海岸と湖岸、国立史跡・景観トレイルと国立戦場地を含む、6億4千万エーカー(260平方キロメートルあまり)のアメリカの公有地は、この地球上において最も愛され、美しい野生の、かつ物議を醸し出す土地のいくつかを有します。これらの土地がいまだに存在するという事実は、その代弁者となるために協力してきた献身的な人たちの熱心な取り組みの証です。

これらの記述は、映画『パブリック・トラスト』に取り組んだ1年半を通して書き留めたもので、公有地を保護するためのこれらすべての会合に耐え、実際の仕事をしてきた縁の下の力持ちに深い敬意を払うものです。

仕事が成し遂げられる場所

北極圏野生生物保護区について聴衆に語りかけるグウィッチン・ステアリング委員会の事務局長バーナデット・デミエンティフ。コロラド州デンバー。Photo:Jeremy Hunter Rubingh

6月12日、フォート・ユーコン、グウィチャア・ジー

北極圏の北13キロに位置するアラスカ州フォート・ユーコンの1日は長い。事実、それが実際に終わることはない。夜遅く、あるいは朝早くの、太陽がいちばん低いとき、斜めの光が僕のテントのまわりの乱雑に生えた北方林、ヤナギランや野バラを通して差し込む、魔法の瞬間が訪れる。真夜中のソフトボールの試合が終わり、ほとんどの人がわずか数時間でも眠ると、紛れもない静寂がやってくる瞬間がある。太陽が微妙に上昇する道をたどりはじめると、まもなくコーヒーを買いに行き、その日のイベントの準備を整えるために四輪車を回転させる音とともに、ふたたび1日がはじまる。

僕らは初の北極圏先住民気候サミットに参加するため、ユーコン・リバーの川岸にできた間に合わせのテント設営地に滞在している。ユーコン・リバー水域に住むグウィッチン族とアサバスカン族、ボーフォート海のイヌピアット族、そして北米全土からのその他の先住民族の代表と環境保護団体が、気候変動によって北極で起こっている劇的な変化について、そして北極圏野生生物保護区でふたたび浮上している石油開発の驚異について議論するために集まっている。

このすべての最中、グウィッチン・ステアリング委員会事務局長のバーナデット・デミエンティフは、走るピックアップトラックの後部から電話をかけ、赤いホンダの4輪車で長老や講演者を送り迎えし、サミットの詳細すべてを仕切る。バーナデットは背が高く、痩せた黒髪の女性だ。40代前半の彼女がすでに祖母だというのが信じがたい。バーナデットは保護区における掘削に抵抗する中心的存在で、彼女の祖先、子供、孫、文化、カリブー、北極圏、そして僕らの集合的な未来が自分にかかっていると感じている。

保護区は、1,930万エーカー(7万8千平方キロメートル)を囲む、地球最後の健康な北極の生態系のひとつだ。ジャコウウシ、ホッキョクグマ、グリズリーベア、オオカミそして全50州からやってくる渡鳥の生息地であり、グウィッチンが食糧を依存するポーキュパイン・カリブー群の出産地だ。いわいるエリア「1002」と呼ばれる海岸平野は最も論争されている地域で、その潜在的な油田は何十年にもわたり政争の具となってきた。

バーナデットは皆に思い出させる。この地域はグウィッチンの言葉で「イイジック・グゥワッツアン・グウワダイィ・グードリット」、つまり「命のはじまる神聖な場所」を意味することを。グウィッチンは何千年もポーキュパイン・カリブーの群れを追って慎重に狩り、一度たりとも海岸平野に足を踏み入れてこなかった。この出産地に入ることは、伝統的なグウィッチンの管理では忌み嫌われることである。これらのカリブーはいまもグウィッチンの食糧の70%を供給し、その関係はフォート・ユーコンの小さな食料品店では必需品、たとえば牛乳1ガロンが15ドルであることを知ると、殊に重要となる。

掘削提唱者の主張は、開発のフットプリントはこの出産地のわずか2,000エーカー(9平方キロメートル)にのみ影響する、だ。しかしこの数字には、道路や何百マイルものパイプラインと油田施設への分配線が含まれていない。BLMの開発予想シナリオに基づいたより正確な地図には、この潜在的な開発によって海岸平野150万エーカー(6070平方キロメートル)のほとんどが破壊されることが示されている。いくつかの研究は、わずか1本の道路横断のためにカリブーは何百マイルもの経路変更を強いられることも示している。

またこの影響には、掘削がはじまる前の巨大な9万ポンドの「サンパートラック」を用いた地質実験の見込みが勘定に入れられていない。これはホッキョクグマの住処を破壊する。トランプ政権がこの調査結果を隠蔽しようとしていたことは暴露された。海岸平野は我が国のホッキョクグマの地上の住処地が最も集中する場所だ。妊娠しているメスは冬のはじめに穴を掘り、12月か1月に1〜2匹の子熊を生む。サンパートラックは巨大なランマーのように地を強打し、地質実験シグナルを岩盤に送り、潜在的な石油層のシグナルをトラックに送りかえす。これらの操業は冬のあいだに行われなければならず、そのときホッキョクグマの住処は使われている。

バーナデットとここフォート・ユーコンのグウィッチンの人びとは素晴らしいホストだ。コミュニティ・ホールでは毎夜カリブーのリブかムースのステーキ、あるいは地元のハンターが提供するその他の珍味をご馳走になり、そのあと伝統的なバイオリンのダンスパーティがはじまり、それは踊る人がいるかぎりつづく。日中は、北極地方のあらゆる場所に住む人びとが、通常の狩猟パターンを危険にする川の氷の早い崩壊についてのストーリーを分かち合う。人と動物が氷を突き破って転落しているのだ。彼らは異常なサーモン回帰と川の沈泥について、そして零下40度であるべき2月に雨のなか子供を学校に連れて行くことについて語り合う。科学者は言う。北極は世界の他の場所に比べて2倍の速さで温暖化していると。

保護区のための闘いは何十年もつづいてきたが、海岸平野の掘削はこれまでのどの時点よりも現実味を帯びている。2017年の減税・雇用法により、その掘削権リースのファストトラック認可は正当な理由なしに2021年までと設定された。アラスカ州の上院議員リサ・マコウスキーとその他の共和党の下院議員は、「包括予算調整法」という滅多に使われないプロセスを利用して、この税制改革法案に保護区を忍び込ませた。保護区を税制法に付け足すことにより、51票の単純過半数で通過できるからだ。税制法をめぐる討論がマスコミの多大な注意を引きつけたため、アメリカ人のほとんどが北極圏国立野生生物保護区の重要な生息地が石油開発に手渡されたことに気付きもしなかった。

それすべては、フォート・ユーコンのコミュニティ・ホールからは遠く感じられる。そこで今朝、バーナデットと僕は高いクロトウヒとカバノキをせわしなく動きまわるアメリカゴガラとユキヒメドリを眺めた。彼女は異なるグウィッチンの長老と若者のリーダーを証言させるため、あるいは下院議員やスタッフと会合させるため、こことワシントンD. C.を数えきれないほど行き来してきた。これらの人びとの一部は町に出たことも、交通渋滞や公共交通機関を経験したことも、一度もなかった。バーナデットは彼らの土地と生活について、意思決定者の前で彼らを発言させるため、文化的障害以上のものを進める手助けをしている。当然のことながら、議会聴聞会や自然資源のための下院委員会の会議室で発言することは、とくに故郷から遠く離れた場所では不安だらけだ。彼女はこの闘いを前進させる次世代のグウィッチンの前線リーダーを鼓舞し、組織化し、構築している。

仕事が成し遂げられる場所

ビェラー牧場の出産期。アイダホ州レムハイ。Photo:Jeremy Hunter Rubingh

アイダホ州チャリスの2月のある水曜日

7人の牧場主がここアイダホ州チャリスにある米国森林局の会議室のテーブルを囲んでいる。これらの牧場はセントラル・アイダホ・レンジランド・ネットワークに属しており、それはアメリカにおいて最も野生の公有地150万エーカー(6070平方キロメートル)に集団で放牧する9つの牧場のグループだ。彼らはサーモン・チャリス国有林での放牧管理のための推薦事項を交渉する協働プロセスである、森林局の改正計画について議論するためにここにいる。そのうちの1人、レムハイ・バレーのビェラー牧場のオーナー、メリル・ビェラーは大きな議題を前進させるために必須の役割を果たす。

バンディ一家が武装してオレゴンの公有地を乗っ取った狂気の沙汰にもかかわらず連邦法廷を軽々と抜け出したあと、僕はこの地域に住む牧場主が公有地をどう見なしているか、そしてその管理のために連邦機関とどう連携しているのかを感じ取りたいと思った。また、西部の遠隔地の農地には福祉を受ける牧場主が銃と国旗を振りまわし、アメリカの公有地を州と郡に譲渡することを声高に要求するイメージを超えた、何かがあるのではと思った。辛辣な文化戦争で完全に亀裂するのではなく、大きな環境保護計画が勢いを増す保守的なアイダホ州北中部がそのよい出発点のように思えたのだ。

当時、僕は撮影クルーと旅をしていなかった。独自で偵察し、アラスカ、ハワイを除く全米の州で最も野生のつづく景観のひとつを見渡せる温泉の脇のBLMと国有林の林道で、トラックの荷台に寝ていた。ノー・リターン・ウィルダネスのフランク・チャーチ・リバー、セルウェイ・ビタールート・ウィルダネスと、サーモンそしてレムハイ・リバー回廊が望める場所なんかだ。これらは複雑な地形を縫い合わせるように流れる河川によって連結する広大な原生地域である。レムハイ・バレーでは、林道と柵のラインが次第に小さく見えるようになると、目は想像力が先導する場所へと向く。神秘と野生生物と冒険に満ちた暗い森へと。怪しげな雲は柔らかく親しみやすい斑雪の頂の上を移動し、セイヨウネズが広がるカーキ色の丘が大きく解放された放牧地へと下ると河谷は平になる。

トラックの後部ドアに座り、馬草でいっぱいのトレイラーが下の牧場で掻き立てる泥の雲を見つめていると、僕は時間を無駄にしていると感じはじめた。この地域の公有地で放牧する牧場主にあまり食い込む幸運に恵まれていなかったからだ。出産や焼印を押すのに誰もが忙しすぎるのか、ただたんに折りかえし電話をくれないだけなのか。友達とスキーをしようと荷物をまとめてガレナ峠へ向かうことを真剣に考えていると電話が鳴り、メリル・ビェラーが僕を彼の牧場に招いてくれた。

食卓を囲んで座ると、末日聖徒イエスキリスト教会の写真が彼の頭上の壁に掲げられていた。メリルの語り口は穏やかで、口を開く前に言いたいことを考慮する。彼が話してくれたのは、家族牧場の買い手が小切手をもって車道で待っているあいだ、父がそれをつづけるかどうかの決断を迫られた15分間についてだった。彼は牧場を家族に残すことにした。「僕は山の渓谷の外で心地よかった試しがないからね」
彼は公立学校の教師とコーチを努めた21年、モルモン司教そしてアイダホ州第8区の共和党の州議会議員として務めた8年について語った。

アイダホ州議会議員としての彼の最後の任期に、公有地を州に譲渡しようとするいくつかの法案が浮上した。メリルはこれらの譲渡法案に反対した。「第一に、アイダホ州で近年日常的になっている大規模な山火事が起き、これらの土地が州の責任だったら、州予算は一発で消えてしまう」と彼は言う。そのような立場に置かれたら、州は必ずそれを売却すると彼は考える。これらの公有地を維持する単純なコストを賄うことは、西部のどの州にもできない。「それらの土地が入札にかけられたら、巨大な資源をもつ人びとに売られてしまう」とメリルは語る。「地方の地域社会はまったくその恩恵を受けられなくなってしまう。損をするのは僕らだ」

彼はなぜ一部の人が土地譲渡という考えに引き付けられるのかを理解している。アイダホの地方の地域は苦しんでいる。人口は減り、人びとは答えを探している。「そんな共同体意識を失うのは、本当につらいんだ」と彼は言う。
しかしメリルは土地譲渡を好む人びとが謳う長期的な経済的恩恵を疑問視している。「僕にとって、我々の公有地という宝物を失うことは、約束されたいくばくかのお金を得るために富を犠牲にしていることだ」と彼は語る。メリルにとって、繁殖したセージに覆われた岩の露頭まで孫たちとハイクしたり、U字型にくねったレムハイの支流に遡上するサーモンを探すことは、金銭的価値を付けられるものではない。

メリルとレムハイ・リバー回廊の他の牧場主は30年にわたり、サーモンの生息地を回復し、牧畜の影響を緩和させることに取り組んでいる。彼らはみずからの所有地でふたたび支流をつなげ(その一部は150年も切断されていた)、引水方法に重大な修正を加え、1年のうち重要な時期には大切な川岸地域に牛を近づかせないようにしている。

チヌーク、スチールヘッド、カットスロートはこれらの山間の渓谷に太平洋からふたたび回帰している。「まだ僕らは危機を脱していないが、改善は見られる」とメリルは言う。彼と他の牧場主たちは自生の野生サーモン個体をその歴史的な産卵エリアに回復させたいと願っている。州全体で減少の一歩をたどるサーモンの個体数、スネーク・リバーで産卵するサーモンを遮る8つのダム、そして気候変動と変化する海洋状況など可変性の要因すべてを考慮すると、これは巨大な仕事だ。メリルは前進する唯一の道は、絶対に誰も取り残されないこと、必ず全員を会話に参加させることだと言う。この会話が理由で、彼はサーモン・リバー渓谷からチャリスまで運転し、他の利害関係者と毎月会合をもつ時間を取る。

仕事が成し遂げられる場所

2017年12月4日にソルトレイク・シティで街頭の抗議者と対決する警察。これは『パブリック・トラスト』の撮影の初日で、トランプ大統領が、法的正統性が疑問視されるベアーズ・イヤーズとグランド・ステアケース・エスカランテ国定公園の削減を発表するためにソルトレイク・シティに到着した日だった。

4月の第3火曜日、ユタ州サンフアン郡にて

今朝目覚めた僕は思案していた。郡の委員会の会合が行われるユタのモンティチェロのメインストリートにある2階建のビルで、今日何が起きるのかについて。いまこの州の南東部の角には大きな緊張が存在する。トランプ大統領が、法的正統性が疑問視される85%の削減を命じたあと、ベアーズ・イヤーズ国定記念物はいまも宙に浮いたままだ。そしてこれらの会合で、すべてが頂点に達する。

2018年の裁判所命令により、サンフアン郡区域では党利を目的とした勝手な選挙区改正が是正された。以前の境界線はディネ(ナバホ)とユートの票を周縁化させるために、これらの先住民がサンホアン郡の人口の大半であるにもかかわらず、不法に引かれたもので、何十年ものあいだ、保守的な白人のモルモン教徒が郡政委員会の過半数を占めていた。委員会にはいま、ケネス・マリボーイとウィリー・グレイアイズの民主党のディネ族2人が含まれている。

3人目の委員はブルース・アダムスだ。1年前、彼はトランプがベアーズ・イヤーズ国定記念物を削減し、石油とガスおよびウランの利害者に解放することを発表したとき、特別ゲストとしてソルトレイク・シティの議会に招かれた。アダムスは大きな白のカウボーイハットのつばに、「サンフアン郡をふたたび偉大にする」というサインをトランプからもらった。

会議は簡単な議題からはじまる。それは道路脇の有毒な雑草に対処するための郡予算の認可、郡のメンテナンス車両のオイルを合成潤滑油にアップグレードするかどうかの決定、前回の会議の議事録を承認するなどだ。そのあと市民の意見が招かれると、2人のディネ委員は1〜2時間、卑下、暴言、怒りに晒される。

残りの議題には、記念物の削減に反対する決議、連邦政府の道路のない地域を開発から保護するロードレス規制を保守的なユタの議員が弱体化させる試みに反対する決議、そしてより多くの人が郡政府に接触し、より多くの先住民が実際に参加できるように、これらの会合をより遠隔地で開催する決断などがある。

60代のマリボーイは襟付きの長袖シャツをたくしこんだおしゃれなラングラーをはき、真っ黒な髪はこざっぱりととかしてある。委員会の新議長として、彼はフレンドリーながらも大声で会議を仕切り取る。グレイアイズは長いグレーヘアで人好きのする口髭をはやしている。ソフトな眼差しの彼は慎重に耳を傾け、一言一言を確認しながら喋る。

モンティチェロから参加の大柄の中年の女性は怒りで体を震わせ、新しい委員はサンフアン郡の大半を代表していないと示唆し、「委員たちによる人びとの扱いにあぜんとしている」と言う――明らかにディネ,ユート、そしてその他の先住民の代表が何十年も欠如していたことにすら気づかずに。もう1人のモンティチェロの地元民は「大半の白人人口はこの記念物を欲していない」と説明する。そしてこの人口は「この会議室にいる人びとに基づけば、あきらかに郡の大多数である」と。僕の隣に座り、会議のあいだほぼずっと人種差別用語を小声でささやくことを制御するのに苦労していた、オーバーオールを着て補聴器をつけた年配の男性は立ち上がり、ディネの委員2人はたんによそ者の環境保護利害者に操られる人形だと述べた。

郡の委員たちはこの敵意のなか、平静かつ辛抱強く全員の発言を聴いた。マリボーイとグレイアイズは5つの先住民族が集まって推薦したベアーズ・イヤーズ国定記念物の元々の境界線を支持することに投票する。公式意見を提出した98%のアメリカ人も元々の記念物を支持した。アダムスは予想通り反対に票を投じた。ディネの委員たちは新たな多数派を成している。彼らは選出してくれた人びとを、そして彼らが代表する土地を深く気遣う多くのアメリカ人を代表する仕事をするだろう。

その間、この物議の中心であるシーダー・メサのある場所では、まだ略奪者や石油とガス掘削装置、ウランの尾鉱、あるいはあまりにも多くのアウトドア熱狂者に荒らされていないその渓谷で、レイブンが春のコットンウッドの上を舞い、風の音がその羽を揺らす。このキャニオンにおいては、砂岩の壁に隠された居住地とペトログリフ、そして祖先と宇宙の創造の力の存在はいまなお乱されずに残されている。

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バウンダリー・ウォーターズをパドリングすることは12歳の自分とふたたび知り合うこと。写真家ジム・ハーストがバウンダリー・ウォーターズのガイドであるスペンサー・シェイヴァーの写真を撮る写真。ミネソタ州スペリオール国有林のハム・レイクにて。Photo:Jeremy Hunter Rubingh

バウンダリー・ウォーターズの9月

僕らはフットボール場の2倍ほどの大きさの静かで完璧な湖をパドルしている。ここミネソタ北部のバウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリア・ウィルダネスを去るために僕たちがテイクアウトする3つの湖の1つだ。僕らを囲む朝日と濃い霧のなか、輝くレースのような対流霧が平らな湖面から昇ってくる。昨夜は焚き火の上でウォールアイとライチョウをあぶり、雷雨と不気味な水潜り鳥の泣き声のなかで笑いながら、ウィスキーを飲み過ぎた。

その日はかなり早くにテイクアウトした。イーリーに戻る途中でミルクシェイク休憩をする時間。
かつては鉄とタコナイト採掘の町だったミネソタ州イーリーは、いまではアウトドア・レクリエーションの拠点となっている。パドリング、狩猟、釣り、犬ぞり、クロスカントリー・スキー、そして雪中キャンプまで、バウンダリー・ウォーターズ遠征の出発点でもある。ダウンタウンにある〈キャンペーン・トゥ・セーブ・ザ・バウンダリー・ウォターズ〉の事務所では、地域の取りまとめ役であるリーバイ・レックスヴォルドが大きな地図で、最近チリの会社アントファガスタ・ミネラルがバウンダリー・ウォーターズとの境界にあるスペリオール国有林のカウィシュウィ・リバーにおいて硫銅鉱の採掘権リースを許可された場所を示してくれる。

硫銅鉱の採掘はアイアン山脈で有名な鉄とタコナイトの伝統的な採掘とはかけはなれている。アイアン山脈から採取された鋼鉄はミネソタの誇りの源だった。アメリカが第二次世界大戦で勝利するのを助けたからだ。僕が会話した人のなかには、それらの古い鉱山に大きな異議を唱える者は誰もいなかった。しかし銅鉱石はここでは採掘されたことがなく、その廃石と尾鉱はまったく異なるものだ。さらにそれが水系に深刻な影響を及ぼさずにこれほど湿った連結する水域で行われたこともない。2016年、オバマ政権は提案されていたトゥイン・メタルズ鉱山の鉱物採掘権を剥奪した。このエリアを保護することを支持する一般からの何千もの意見と、手付かずのバウンダリー・ウォーターズの生態系システムに危害を与える何百年もつづきかねない酸性鉱山排水の潜在性を考慮したからだ。そして2017年、トランプ政権はこの決断を覆した。

リーバイは30代はじめでボサボサの赤毛の上に赤い野球帽をかぶっている。彼は前年イーリーの髭コンペで2位だったときの写真を見せてくれる。髭をバイキングの船の形に整えたのだ。地元のパブでの深夜の論争の結果で、ワイヤーフレームの眼鏡の下の彼の目は黒ずんでいる。どうやら知り合いはリーバイのバウンダリー・ウォーターズの提唱活動は彼の文化とアイデンティティに対する侮辱だと感じたらしい。この地域の住民の一部はこの場所の長い鉱業の歴史をもてはやし、銅山を支持する。

リーバイは黒あざを笑い飛ばすが、この問題で地域が亀裂していることを認める。イーリーのダウンタウンの同じ区画には、「私たちは鉱業を支持し、鉱業は私たちを支持します」と「バウンダリー・ウォーターズを救おう!」と書かれた看板が立てられている。それでもリーバイは真実を語ることを恐れない。来る日も来る日も〈キャンペーン・トゥ・セーブ・ザ・バウンダリー・ウォターズ〉の事務所を明るく運営し、ビジターはこの地域の地図を見て、問題について学ぶためにやって来る。

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ハル・ハーリングとモンタナ州グリーナフのブラックフット・リバーの上流にあるフアニタ・ベロのEバーL牧場で3日撮影したあと。僕らがロッジで見つけたバッファローの皮はエコーを抑え、音質を高めてくれた。Photo:Jeremy Hunter Rubingh

ロッキー山脈フロントレンジの11月のある木曜日

今日僕らは公有地に関するアメリカ最高のジャーナリストであるハル・ハーリングと、ボブ・マーシャル・ウィルダネスの境界の米国森林局の土地にある倒木を持ち上げている。薪にするためだ。彼は公有地にどっぷりと浸かって生活する者としての観点から、土地と水について報告する。それが家を温めることであっても、冷凍庫と家族のお腹をいっぱいにするための狩りと釣りであっても、娘と一緒に古代のバッファローの頭蓋骨を探して河床と支流を散歩することであっても、自生の生息地を修復するための一員として働くことであっても、ハルはみずからの人生を公有地の近くで生きられるように計画し、ロッキー山脈フロントレンジの山々、丘陵、河川から得られるひらめきの近くで育つ機会を家族に与える。

ハルの家では本が山積みになっている。モンタナ州オーガスタの質素な家は、僕が見たことのある最も素晴らしい環境保護本の図書館のひとつだ。全体像について語るなら、ハルは君とジャック・ダニエルズを飲まねばならず、君が彼の布団であまりよくないうたた寝をしているあいだ、彼は凶暴なアフリカの軍閥リーダーのビデオをYouTubeで見ているかもしれない。君はなぜリベリアの人食い部族リーダーのビデオを見ているのかについて興味をもつかもしれない。それはある意味ハルを説明するものだと思う。彼はすべてにおいて、殊に人びとの動機について、純粋な興味を抱いているのだ。

彼が話すとき、唸り声のようなアラバマなまりにはホッとさせられるものがあるが、じきに測りしれない才気で喋りたてる。彼の記憶力は尋常ではなく、ピーター・マシーセンの『神の庭に遊びて』やクリーン・ウォーター法令からの重要な文を引用したり、あるいは1920年代の石炭産業の労働者の残酷な扱いについての1987年の映画『メイトワン』の台本を全部をわかりやすく説明することができる。もしかしたらスターリングラード攻防戦から学んだ教訓を思い出させるかもしれない。ハルの話を聞くと、自分が何も読んだり見たりしてこなかったように感じる。彼はまた完全な集中力と誠実さで、誰の話でも聞く。

ハルは子供のころ、学校はほぼ不可能だったと教えてくれた。やりたかったことすべては野外にあった。彼はフロリダのオレンジ農園で働くために高校を退学し、旅とクライミングをするために金を貯めた。メキシコ湾の漁業設備からウェアハウザーでの植林、アリゾナのブラック・メサの鉱山再生まで、外にいられるためにありとあらゆる仕事をした。いまでも著作からの慎ましい所得を補足するために、ヨモギ植えのスタッフを管理し、白マツのマツカサを集める。

ハルはこの国が依存しながらもたいてい感謝されないことをしている――僕らの公有地への最大の脅威についての執筆だ。僕らの土地、空気、水に実際に何が起きているかについて知るための手段を提供し、僕らがそれについてどんな行動を起こすかを決断できるようにするために。彼はしばしば「学ぶ機会がなかったから無知だった、ということについて、誰かを責めることはできない。公有地について学んだことを共有するのは、僕の義務だ」と語る。これらの問題についての真実を報告することに対するハルの粘り強さは、アメリカの理想主義の最高の例だ。それは情報に長けた市民が僕ら全員のために託されているアメリカの土地について意思決定者に責任を問う好機なのだ。

ハルの古い緑色のシェヴィー・シエラのピックアップトラックの荷台にマツの良い丸太を積み、川岸を1時間駆けまわったあとどうにかして僕らのもとに帰ってきた彼のブラックラブのブーレィを乗せる。上下に揺さぶられながら林道を町まで戻りながら、僕は公有地が彼にとって実際に何を意味するのかと尋ねた。彼の答えはただ一言「自由」だった。

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