クリーネストライン


この船に積まれているような古い漁網は、海洋プラスチック汚染の要因のひとつとなっている。チリ、タルカワノ Photo : Jürgen Westermeyer
この船に積まれているような古い漁網は、海洋プラスチック汚染の要因のひとつとなっている。チリ、タルカワノ Photo : Jürgen Westermeyer

ネットでプラス

By アダム・スコルニック   |   2020/07/16 2020年7月16日

廃棄されたプラスチックの漁網がどのようにしてパタゴニアの帽子のつばになったのか

毎年、800万メトリックトン以上ものプラスチック廃棄物が海に流出します。プラスチックは座礁したクジラや季節によって移動するアホウドリの体内にも見られ、また深海底堆積物や北極の氷床コアでも見つかっています。海に存在するプラスチック粒子の数は夜空の星の数を上回ります。この問題の最大要因のひとつにあるのが水産業です。

破損した古い漁網は船から投げ捨てる、というのが数多くの理由から何世代にもわたる慣習で、廃棄された網は現在世界の海洋プラスチックの総体積の10パーセントを占めています。しかしこうした網にはじつは、再利用の方法がまだたくさんあります。
「網の寿命は使用方法によって2~3年ですが、その役目が終わっても素材自体には大きな価値が残っています」と言うのはケヴィン・エイハーン。2012年、ケヴィンは友人のベン・ネッパーズとデイヴィッド・ストーヴァーとともにこの価値あるものを収集し、その過程で、海洋プラスチック汚染を削減する方法を考えはじめました。

そして2013年、3人はチリ政府の助成金を受け、網をスケートボードの材料に変えるためにチリ国内に店を出しました。彼らはこの会社を、チリの先住民族マプチェの言葉としてよく知られている、「波」を意味する「ブレオ(Bureo)」と名づけ、さっそく網を譲ってくれるよう漁師たちに働きかけました。集めた網は貸し倉庫に保管し、手作業で洗浄して切り刻み、それらをリサイクル業者と契約して溶解処理し、ナードル(プラスチック製品の原料となる小型ペレット)にしました。彼らはこの素材に「ネットプラス」という商標をつけ、1年も経たないうちに最初のスケートボードを発売しました。つづいて2番目のボードも完成したものの、製造も販売も軒先にある網の量には追いつきませんでした。

小売ではさばききれないほど大量の原料を抱え込んだブレオは、自社製品を製造することから、すでに定評のあるブランドとパートナーを組むことに方向転換しました。そして2016 年、パタゴニアはトラッカー・ハットのつばに使用するバージン・プラスチックからの切り替えを目指してブレオとの協働をはじめました。

当時ネットプラスは、ほぼすべてが主にチリの水産業界で使用されてきたナイロン製(世界中のほとんどの場所で主原料とされているものと同じ)の網で作られていましたが、ミシンを使用するそばから針が折れました。さいわいにも、南米の漁師は高密度ポリエチレン(HDPE)製の漁網を使うこともあり、これは通常パタゴニアの帽子のつばに使うポリマーと同じ原料でした。ブレオがネットプラスの原料としてHDPE製の網を使いはじめると、ミシン針は折れなくなりました。集めた漁網のひとつひとつから、ブレオでは100%リサイクルされたプラスチックを生産することができ、そのプラスチックは第三者機関によって認証済みで追跡可能です。

そこで、南米を拠点としているベンがアルゼンチンの主要漁港であるマル・デル・プラタに行き、地元の漁網製造業者モスクーサ(Moscuzza)と取引契約を結びました。モスクーサの古い漁網は1ポンドあたり約20セントでブレオに売られることになったとのことで、こうした網に第二の命を与えるきっかけと基盤が同時に生まれました。またチリの25か所以上の漁場でも、ナイロン製およびHDPE製の漁網の製造業者と似たような取引をまとめ、さらにペルーの10か所あまりの漁村に漁網を供給する製造業者とも提携しています。

廃棄物を新しい原料の源と見なすことは循環経済の核心とも言えますが、それを実践する産業はほとんどありません。「ひとがモノを捨てるのは、価値がなくなるからです」と、ベンは語ります。「モノに何らかの価値を見出すことができれば、それはゴミではなくなります」

ブレオがパタゴニアと手を組み、毎年35トンの漁網の廃棄物を帽子のつばとして再利用することにより、海から有害な廃棄物の流出を防ぐ方法をご覧ください。

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