カリフォルニア州ロサンゼルス、ウィルミントン地区の公園の背後にある石油精製所。NAACP(全米黒人地位向上協会/全国有色人種向上協会)の調査によると、全米の91郡の670万人以上のアフリカ系アメリカ人と低所得者が居住する地域の近くでは、石油精製所が建設中であるか、すでに存在している。Photo:Michael Estrada
カリフォルニア州ロサンゼルス、ウィルミントン地区の公園の背後にある石油精製所。NAACP(全米黒人地位向上協会/全国有色人種向上協会)の調査によると、全米の91郡の670万人以上のアフリカ系アメリカ人と低所得者が居住する地域の近くでは、石油精製所が建設中であるか、すでに存在している。Photo:Michael Estrada

不正義について

By ナオミ・ホラード   |   2020/05/21 2020年5月21日

ムスタファ・サンティアゴ・アリが、社会階級や民族を超えた運動の力と環境正義の必要性について、「サンライズ・ムーブメント」のナオミ・ホラードと対談。

9月、数百万人の若者による史上最大の気候ストライキで、世界中のニュースを揺るがしましたケンタッキー州の丘や渓谷から、ラストベルトの街やサンフランシスコの曲がりくねった道にいたるまで、若者は授業や仕事を放棄して歩き、気候危機と闘う勇敢な行動を起こしたのです。

私にとって、ストライキは政治的行動を要求する好機でした。私たちは世界で最も裕福なこの国において、誰もが意義ある仕事に就けること、食卓に新鮮で健康的な食事が出せること、蛇口から出る水が清潔で安全であることを、肌の色、出生地、収入に関係なく確保するために、ストライキをするのです。ストライキは、私たちに先立ってこの取り組みをつづける指導者たちから学ぶ好機でもあります。

ムスタファ・サンティアゴ・アリは、そうした指導者の1人です。環境保護庁(EPA)の環境正義・地域再生化担当の元シニア顧問で、「ヒップホップ・コーカス」の元シニア・バイスプレジデントだった彼は、現在〈ナショナル・ワイルドライフ・フェデレーション〉の統括責任者を務めています。ムスタファはこれまでの30年間、最前線の地域社会、つまり先住民族、黒人、ラテン系、低所得層、労働者階級の人たちを擁護するとともに、彼らとともに何世紀にもわたる環境不正義を是正する政策の解決策を作ってきました。今日では、最も被害を受けやすい地域社会を「生き残ることから繁栄へ」と移行させることに焦点を当てるビジネス、「リバイタライゼーション・ストラテジー(再生化戦略)」の創業者でもあります。

私はムスタファと、真に社会階級を超えた多民族の環境運動の力、そして今後10年間の構想や環境正義の任務について話す機会を得ました。対談内容はわかりやすくするために編集し、要約しています。

ナオミ・ホラードNAACPの調査によると、米国全土で100万人以上のアフリカ系アメリカ人が天然ガス施設から半マイル以内に住み、多くの地域社会が工場から放出される物質と関係がある癌の高い危険性に直面しています。それでも、環境的人種差別や環境正義について聞いたことがない人もいます。これはいったいどういうことでしょうか。

ムスタファ・アリ:大気汚染や水質汚染、あるいは地域社会に対する負の投資など、それが何であれ、環境不正義とは地域社会がそうは望まないのに有毒物質の犠牲地域になる状況です。

環境正義とはその逆で、最も被害を受けやすい地域社会を再生させることです。私たちの声を地域社会を前進させる推進力にして、真の変化を起こす政策を打ち出すのです。この2つはコインの表と裏のようなものです。

ナオミ:環境不正義という図式は、実際にはいつはじまったのですか。

ムスタファ:ヨーロッパ人が最初にこの大陸にやってきて先住民から土地を略奪し、彼らの文化的生活様式に影響を与えはじめたときからです。船で連れてきた労働者に最も危険な仕事をさせ、この国のインフラを構築した中国人移民を搾取するなどして、続いてきました。

ナオミ:そうですね。それは建国以来いまもつづく闘いです。人びとを身体的に搾取するだけでなく、土地や土地所有権、主権の搾取も行われています。そして黒人に対しては、生活に不可欠な水を重視していないということもあります。ミシガン州フリント市の場合、5年たったいまでも依然として水資源の危機が地域社会に影響をおよぼしています。環境正義のために闘っている地域社会の要求を満たすには、環境政策はどのようにあるべきでしょうか。

ムスタファ:クリーンでグリーンなエネルギーの仕事があり、そのような仕事は間違いなくすべての人に開かれていることが必要です。環境政策が正義を重視しなければ、これまでの不正義な概念が繰りかえされるからです。有色人種はこれらの仕事に就くための職業訓練を受けることができません。

私たちが慎重さを欠いたがゆえに、正義が政策に組み込まれないというのでは、有色人種はクリーンな経済への移行の一員にはなり得ません。

「グリーン・ニュー・ディール」に医療を含めようというのは、最前線の地域社会のメンバーが長年提唱してきたことを反映したものです。公平性のある仕事を提唱し、新しくクリーンでグリーンなエネルギーの仕事とその経済の重要な部分は、すべての人に開かれる必要があるのです。

一例は「グリーン・ニュー・ディール」に医療の権利を含めることです。影響を受けているこのような地域社会は、十分な健康保険が適用されていないとか、保険がまったくないとか、医療において十分なサービスを受けていない地域社会ばかりです。ですから多くの場合、有害な汚染の影響を受けていても簡単に診療所や病院を受診するのは容易ではありません。

人びとがどうやって地域社会を再生してきたか、その実例に政策を結びつける必要があります。アパラチア地方にもラストベルトにもメキシコ湾岸にも、この国の地域社会の変容を支援する真の機会があるのです。

抗議のスローガンを唱えるムスタファ・サンティアゴ・アリ。ムスタファはこれまでの30年間、最前線の地域社会を擁護してきた。Photo:Mustafa Santiago Ali
抗議のスローガンを唱えるムスタファ・サンティアゴ・アリ。ムスタファはこれまでの30年間、最前線の地域社会を擁護してきた。Photo:Mustafa Santiago Ali

ナオミ:2018年はじめ、世界の著名な科学者たちは地球温暖化を摂氏1.5度未満に抑え、洪水、干ばつ、猛暑、そして何百万もの人びとに与える壊滅的な影響の危険性を回避するには、あと12年しかないと警告しました。残された10年から11年がどのようになるかを考えたとき、何が見えますか。

ムスタファ:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)と全米気候評価によって特定された数字は、すべて控えめです。彼らは全詳細で人びとを怖がらせたくないのです。ですから私たちがこのような改革を行うことが必要です。そしてエネルギー民主主義、食料正義、被害を受けやすい地域社会を真に再生させる行動といった措置が、21世紀の新しい概念の中心にならなければなりません。

でもそれは私たちにできることなのです。ただ何を優先させるかだけです。私は連邦議会で働いていたので予算はあることを知っています。私は歳出予算を担当していました。本当の改革を起こすための資金があることは分かっています。また投票権を保護して活用する必要があります。私たちが投票することで人びとは責任を負い、資金は最も必要な場所に届きます。

ナオミ:1992年、あなたはEPAでの環境正義室の設立を支援しました。その当時の闘いは現在と比べてどうでしたか。

ムスタファ:当時は、環境的人種差別、環境公平性、環境正義について話題になりはじめたころでした。地域社会で人びとが体験していること、気づいていること、感じていることは、現実ではなく、勝手な作り話だと言う人がいました。

今日の気候変動否定論者を思い出します。そうした人たちは30〜40年前に環境正義の影響を同じように否定していました。彼らは正に同じ脚本を読んでいたのです。ですがそのような古い論点と行動は、もはや受け入れられず、許されもしません。

ナオミ:彼らは環境的人種差別と不正義が存在することを否定していたのですか。

ムスタファ:まったくそのとおり(笑)。私がEPAで働きはじめたばかりの学生のころ、はじめての会議に向かうために廊下で2人の年配の白人男性のマネージャーを追い越したときのことを覚えています。当時私は12歳くらいの子供に見えたらしく、彼らは私のことを気にも留めませんでした。一緒に乗ったエレベーターで彼らがこう言っていたのを覚えています。「なぜこんな会議に出なきゃいけないんだ。彼らが言っていることは事実なんかじゃない。この国で起こるはずなどないことだ」彼らこそ地域社会を守る責任のある人たちでした。

当然、特定の業界で働く人たちや、政治家や、そのような企業からお金を稼いでいる人たちは、これを否定しようとしました。その人たちはこれでお金を儲けていたのですから。

過去と現在の取り組みに現政権が大きな害を与えているのは、そのせいです。市民と本物の関係を築くことが必要でした。私は数人の一流の環境正義の指導者に育ててもらいました。人びとはここにいたるまでに多くの苦労をともなってきました。嘘をつかれたり、危害を加えられたり。地域社会からの信頼を得るには長い年月がかかりました。そしていま、この政権によってその信頼すべてが失われようとしています。ふたたび信頼を得なければなりません。でも以前は、科学と情報を寄せ集めなければなりませんでした。能力を構築する必要がありました。まさに以前は、人びとは意思決定の場にいることを許されていませんでした。だから私たちは長年にわたってそのような機会を築かなければなりませんでした。

2018年12月、ナンシー・ペロシ下院議長のオフィスで「サンライズ・ムーブメント」の活動に参加するナオミ・ホラード(右)。写真:サンライズ・ムーブメント Rachel Warriner 提供
2018年12月、ナンシー・ペロシ下院議長のオフィスで「サンライズ・ムーブメント」の活動に参加するナオミ・ホラード(右)。写真:サンライズ・ムーブメント Rachel Warriner 提供

ナオミ:そのとおりですね。そのため「サンライズ・ムーブメント」はデモ行進をして、何年にもわたって深く根付いた腐敗を終わらせるよう、指導者たちに働きかけています。私は子供のころ、1960年代に軽食用のカウンターで座り込みをしていた人たちのことを読みました。いつも自問していました。「私は、ああいう場所に座って、嫌がらせを受けて、殴られて、刑務所に入れられる、なんていうことになるのかしら」と。いまこそ私たちのときだと感じています。いまこそ歴史的な範囲において自分たちを証明するときなのだと思うのです。

私の家族の半分はカリブ海のグアドループ島に住んでいて、ハリケーン・マリアに襲われました。それはカテゴリー3にすぎませんでした。でも私の先祖が埋葬されている、格子のように並んだ墓地があるこの美しい島が破壊されるのは、もはや時間の問題だと思っています。いくつかのハリケーンに襲われて、大洪水が起き、すべてを奪ってしまうのは、もう時間の問題です。だからこの闘いの一部は、私がやらねばならない闘いなのです。

ムスタファ:つまり、その闘いの別の部分は、お金がもつ力を人たちに理解させなければならないことです。私たちは経済的な排斥をしなければなりません。私たちと取り組む人たち、私たちにさらなる危害を加える人たち、地域社会を壊す人たち……。誰にお金を投資しているのかを正しく追跡するのは不可欠な要素です。化石燃料への投資からは撤退しなければなりません。11兆または12兆ドルの化石燃料ダイベストメント(投資撤退)が現在実施されていますが、今後さらに増えるでしょう。

公民権運動、その大きな要点は、人びとが「自分たちをひどい目にあわせ、差別する者たちに、自分たちのお金は投資しない」と言ったことでした。

居住地域の石油掘削を阻止しよう

都市の石油掘削地のあいだに2,500フィート(762メートル)の緩衝地帯を設定するようロサンゼルス市議会に求める、〈コミュニティーズ・フォー・ア・ベター・エンバイロメント(より良い環境のための地域社会)〉と〈STAND-L.A〉への支援をお願いします。

Take Action