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モンタナに悔いなし

ディラン・トミネ  /  2017年9月14日  /  読み終えるまで6分  /  フライフィッシング

モンタナのマスが潜む水に足を浸し、乾燥した高原の景色を満喫するために上流へと向かうイヴォンと子供たち。Photo: Dylan Tomine

子供たちが成長するにつれて、一緒に過ごす時間がいかに短く、貴重であるかということが、ますますはっきりとわかるようになる。また私にとっては、子供たちが私の人生の鍵となる人物たちとともに過ごすことも、これまで以上に重要となってきた。友人や恩師など、これまで私を刺激しながら助けてくれた人たちと接することで、子供たちにもそうした人たちの知恵や寛大な精神のお裾分けに与ってほしいという願いからである。そんな思いを胸に抱いていたのと同じ時期にスカイラとウェストンがフライフィッシングに強い興味を示すようになったので、私たちは東を目指してピュージェット湾を発った。そしてロッキー山脈で私の良き友イヴォンとクレイグに落ち合う。それは早朝のフェリー乗船からはじまった。

無数の交通渋滞、カスケード山脈のくねくね道で読んだハリー・ポッターが引き起こした一連の車酔い、アルバム全曲の一語一句を覚えるまで延々と聴かされたザ・ルミニアーズなどをよそに、私たちは最初の晩にミズーラにたどり着いた。そして翌朝にはドライブを再開。エニスでバッファローバーガーを食べるため(郷に入れば……のことわざ通り)に短い休憩を取ると、車に乗っていただけなのになぜか壊れたサンダルを買い替え、食料を補給して、今度は南下をはじめた。

モンタナに悔いなし

長旅の疲れは隠せないものの、興奮はたっぷり。ついに目的地に到着し、マディソン・リバーの川岸に佇む快適なキャビンに落ち着く。ウェストンの言うとおり「人生ってのはこうあるべきだね」Photo: Dylan Tomine

キングサーモンの解禁シーズン中に故郷の水辺を離れて、その代わりにキャッチ&リリースのマス釣りに行くのはたやすいことではない。しかし私は子供たちが楽しみはじめたウェーディングとキャスティングの面白さを、ここでもっともっと経験してほしかった。ところで私にマス釣りの知識がほぼ皆無なことは、もう述べただろうか。だが幸運なことに、「ソフトハックル・ウェットフライの王者」こと我が友イヴォンが私たちを導いてくれる。

クレイグはまず私たちにキャビンの近くにある小川を探検して「足を濡らす」ことを勧めてくれた。マディソン・リバーでもっとでっかいウェーディング(と魚)に挑戦する前の、素晴らしい助言だった。イヴォンと子供たちと私はモンタナのマスが潜む水に足を浸し、乾燥した高原の景色を満喫するために上流へと向かった。その道中でウェストンはグリズリーベアを目撃し、スカイラは雌のムースを見た。釣りをはじめる前、すでに上出来な1日だった。

モンタナに悔いなし

イヴォンのフライボックス。茶色だったら、どれを選んでもいいよ。Photo: Dylan Tomine

モンタナに悔いなし

スカイラにテンカラでのソフトハックルの微妙なトゥイッチングを教えるイヴォン。川幅が狭く水量の少ないここでは、普通のフライロッドとリールを使用している。Photo: Dylan Tomine

モンタナに悔いなし

スカイラとウェストンが滑りやすい状況でのウェーディングと早い水の流れに慣れるまで時間がかかった(2人とも不意に転んで泳ぐはめになった)が、イヴォンがたしかな救助の手を差し伸べてくれた。Photo: Dylan Tomine

ある日私たちはジャガイモ畑と小麦畑のあいだを流れる中くらいの川で釣りをしていた。スカイラがテンカラ・ロッド(リールなし)を自分で使えるようになると、イヴォンはウェストンが適所にウェーディングしていくのを助け、普通のフライロッドを使って同じテクニックを教えた。ソフトハックル・ウェットフライ、下流へスイング、流しながら細かいトゥイッチング、そして……フィッシュオン! 子供たちは1時間のあいだに、それぞれ少なくとも20匹の魚を釣り上げたと思う。たくさんの笑い声とハイタッチ、そして満面の笑顔とともに。クレイグとジャッキーに素晴らしい夕食をご馳走になったあとも、私たちはウェーダーを身に着けて、マディソンの「50マイルの早瀬」と呼ばれる流れに暗くなるまで打ち込んだ。ぜひとも習慣にしたいと思うような生活のリズムだった。

毎日が新しい冒険だった。ある日にはアイダホまで車を走らせ、アッシュトンの近くの荘厳な川で釣りをした。またある日には、イヴォンと子供たちと私はイエローストーン国立公園の高所にあるギャラティン・リバーで釣りをはじめた。ギャラティンはそこでは草原を縫うように流れる小川で、北へたどると石の敷き詰められた中くらいの渓流になった。さらにまた別の日には釣りから休憩して公園の中心部へと足を伸ばし、オールド・フェイスフル(10分遅れだったものの、その混雑と壮観は相変わらずだった)のまわりに群がる観衆に勇敢にも加わったり、バイソンやエルクやビッグホーンシープやムースなどの野生動物を観察したりもした。その帰路ではもちろん、ギボン・リバーやファイアホール・リバーにも立ち寄って、何度かキャスティングしないわけにはいかなかった。

しかしどこへ行こうとも、私たちは「故郷」のマディソン・リバーに戻ってくることで毎日を締めくくった。私たちはしばしばコウモリが宙を飛び交うのを聞きながら、ほぼ真っ暗になるまで釣りをつづけた。暗闇のなかで川にいるときにやって来る興奮と恐れが混ざった、あのぞくぞくする不気味な感覚に包まれながら。

モンタナに悔いなし

この日は公園内の標高の高い場所をハイキングしながら、伸びた草間を縫って流れる川や滝でブルックトラウトを探しまわった。Photo: Dylan Tomine

モンタナに悔いなし

マディソンでイブニングハッチがはじまるのをじっと待つスカイラ。暖かい夕暮れどきの光に包まれて足を水間にぶらぶらさせながら、彼女と一緒に座っているのが好きだった。そしてライズを見て興奮した彼女の声を聞くことも。Photo: Dylan Tomine

モンタナに悔いなし

マディソン・リバーで大きなウェイキング・ドライフライを追う、肥えたニジマスを捕らえたウェストンとクレイグ。ウェストンの表情がすべてを物語っているだろう。Photo: Dylan Tomine

私たちと一緒にひたすら楽しいときを過ごしてくれた、クレイグ、ジャッキー、そしてイヴォンの好意と教え、辛抱強さと寛大さに多大な感謝を捧げる。私たちは家に帰るまでの長いドライブのあいだも、一生忘れることのない感謝の念と思い出に興奮しつづけていた。

このストーリーの初出はディランのブログです。そこでは彼のフライフィッシング、家族、狩猟採集生活についてのストーリーをたくさんお読みいただけます。

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