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電力小売全面自由化で、再生可能エネルギーを選ぶこと

吉田 明子  /  2016年2月19日  /  読み終えるまで9分  /  アクティビズム

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今年4月からいよいよはじまる電力小売全面自由化。2000年以降、50kW以上の高圧部門(工場や自治体庁舎、大規模事業所など)は順次自由化され、多数の新電力会社が参入していましたが、私たちの一般家庭や小規模の事業所への供給は、選択のできない地域の電力会社だけでした。これが4月から「完全に」自由化されます。これまでは、「原発の電気は使いたくない」「再生可能エネルギーだけを使いたい」と思っても、電力会社の選択肢は一つでしたが、これからは複数から選ぶことができます。誰もが支払う電気料金を通じて、私たちは意思表示ができるようになります。どのような電力会社を選ぶかによって未来社会をつくっていく、そこに私たち一人ひとりが参加できるのです。

新電力会社については、2016年がスタートしてから料金メニュー等が次々と発表され、メディアでもさまざまな形で報道されています。ただ、いまのところその多くは、「どのような発電方法の電気を扱っているのか」よりも安さやサービスに注目するものです。私たちは本当に、再生可能エネルギーの電力会社を選べるのでしょうか。

残念ですが、4月からすぐに切り替え可能な再生可能エネルギー/自然エネルギー(以下、再生可能エネルギー)を重視する電力会社は少なく、地域によってはゼロです。なぜなら、そうした電力会社は小規模・新規参入であり、日本は他の先進国に比べて再生可能エネルギーの割合がまだまだ少ないからです。そのうえに電力小売全面自由化により価格競争が起きると、再生可能エネルギーによる電源ではなく、価格が安いとされている電源を確保する動きが世の中に生まれます。そのため石炭火力発電所の新規建設計画も、ここ5年で非常に増えています。気候ネットワークの「石炭火力発電所ウォッチ」によると現在47基の計画があり、これらがすべて建設されれば、日本のエネルギー政策でかかげている「2030年に石炭26%」さえも超えてしまいます。

温暖化対策についていえば、電力業界も自主的に行うことになっていますが、その内容は、石炭火力発電を新増設しながら、海外からのクレジット購入や非化石電源で相殺しようというものです。非化石電源とは再生可能エネルギーだけでなく原発も含みます。つまり、小売全面自由化で安さばかりが追求されると、人間や環境に影響をおよぼす放射性廃棄物を生み出す原発への流れとともに、地球温暖化を促進させる石炭火力への流れもさらに加速してしまうことが懸念されます。この日本の原発・石炭維持推進(=省エネ、再エネは不十分)の方向は、COP21パリ会議の合意にもまったく逆行するものです。

電力小売全面自由化で、再生可能エネルギーを選ぶこと

図:電源別二酸化炭素排出係数(経済産業省資料より)

こうした大きな構造を変えていくためには、たとえこの4月に再生可能エネルギーが選べなかったとしても、持続可能な社会をつくるビジョンをもって、省エネルギー、「再生可能エネルギーを重視する電力会社」を後押ししていく必要があるのです。(注:大手の新電力などでも再生可能エネルギーを扱っているため、「選べない」とまではいえないですが、「再生可能エネルギーを重視する、パワーシフトと方向性を共有する電力会社」を選ぶことはすぐにはむずかしいということです。)

では、「再生可能エネルギーを重視する電力会社」とはどのようなものでしょうか。

1.電源構成や環境負荷などの情報を一般消費者にわかるように開示していること 
EU諸国やアメリカでも法律に基づいて開示・表示が義務化されていますが、日本での現状は「努力義務」です。今後電源構成などの開示がきちんと実施されるよう、消費者として引き続き呼びかけていく必要があります。

2. 再生可能エネルギーの発電設備(固定価格買取制度による電気(FIT)を含む)からの調達を中心としていること
ただ、現在は各社とも、FITを含む再生可能エネルギー電源の調達に苦心しています。もともと日本の再生可能エネルギーの割合が低く(2014年に大型水力含めて約12%)、そのほとんどを既存の大手電力会社が所有しているからです。新規建設や新規調達は一筋縄ではいきません。そのため、「何パーセント以上」のFITを含む再生可能エネルギーならば重視しているという風に線引きするのは今後の検討事項ですが、割合を高めていく取り組みをしているものを評価する必要があります。

3.原子力発電所や石炭火力発電所からの調達はしていないこと(常時バックアップ分は除く)
原発は問題外ですが、石炭火力発電も、前述のように要注意です。加えて大気汚染や健康影響の問題もあります。

4. 地域や市民による再生可能エネルギー発電設備を重視していること
大都市に拠点を置く大手企業が実施するプロジェクトよりも、地域の自治体や企業や市民などが主体となったプロジェクトのほうが、地域でのお金の循環や雇用創出につながります。また大規模プロジェクトでは環境や景観への影響が懸念される場合もあります。市民共同発電など、地域の資源や環境を重視しているところを、より評価する必要があります。

5. 大手電力会社と資本関係がないこと(子会社や主要株主でない)
既存の大手電力会社も再生可能エネルギーを中心とした子会社をつくっていますが、電力の大きな構造を変えるべきであるという観点から、この項目も評価する必要があります。

これらの5つのポイントを満たすよう鋭意準備中の電力会社が、少数ながらも現れています。では、実際にどの電力会社に乗り換えればいいのでしょうか。ガス会社はどうなのでしょうか。

経済産業省に小売電気事業として申請をした電力会社は、申請中のものを含めると300社近くあり、電力取引監視等委員会のウェブサイトでリストを見ることができます。ただ、このリストやそれぞれの会社のウェブサイトの内容だけでは、会社の姿勢や現状など、必ずしも十分に知ることはできません。そのようななか、まずは一度大手電力会社をやめ、情報を精査して次善の電力会社に切り替え、その次の段階でさらにパワーシフトな電力会社に切り替えることが必要そうです。

 

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「パワーシフト・キャンペーン」は2015年3月に、環境団体や消費者団体などを中心として発足しました。現在9つの運営団体と約40の賛同団体(随時募集中)とともに活動しています。キャンペーンは、再生可能エネルギーを重視する電力会社の取り組みを可視化し、実際に選ぶ/契約を切り替える人をひとりでも増やすことを目的としています。原発の電気は使いたくない、再生可能エネルギーを買いたいと、多くの人が考えています。その声を形にしていく必要があります。原発や石炭火力を支える大きな構造を変えるためにも、私たち消費者の行動によって後押ししていく必要があります。

皆様を含めた多くの市民が、早く再生可能エネルギーの電気を使いたいと心待ちにしています。まずは皆様の「買いたい」声を可視化するため、「パワーシフト宣言」にご登録ください。ぜひお近くの方々にもお知らせください。

電力小売全面自由化で、再生可能エネルギーを選ぶこと

電力の市場規模は8兆円、うち約7.5兆円は一般家庭が使用する電力です。いまはすべて自身が選択したものではない地域の電力会社に支払われているこのお金、私たちの今後の選択によって、再生可能エネルギーを重視する電力会社にどれだけ振りかえられるのでしょうか。いまこそ、市民・消費者が力を発揮するときです。私たちが電気料金の支払いを通じて意思表示し、未来をつくっていくことができる大きなチャンスです。安いとされる石炭や原発の電気が流れていく恐れを念頭に注意しながら、再生可能エネルギーを重視する電力会社を応援していきましょう。私たちが生きるこの地球が持続可能でありつづけるために。

電力小売全面自由化で、再生可能エネルギーを選ぶこと

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TakeAction

パタゴニアはGo Renewable – 「再生可能エネルギーを活かして」2016のなかで、4月1日からスタートする電力小売り自由化に際し、原発から再生可能エネルギーへの転換が必要であることを訴え、持続可能な未来社会のためにどう行動すべきかを考えていきます。再生可能エネルギーを広げるための私たちのあらたな一歩に、ぜひご協力をお願いします。

パワーシフト宣言

デンキを選べば社会が変わる!2016年に向けて、「自然エネルギーの電力会社、市民・地域が主体で生み出された自然エネルギーの電力を選びたい」という市民・消費者の声を、たくさん集めて世論として大きく広げ、政府の制度設計を検討する審議会に届けるとともに、電力小口小売り事業者にも一般の市民・消費者の自然エネルギーの電力の大きな需要が存在していることを示していきます。

Go Renewable チェックリスト

これまでにエネルギー消費を減少させたり、再生可能エネルギーを推進するために取り組んだことをチェックしてみましょう。そうすることで、これから何をすべきかを知り、実行し、進捗状況を確認することができます。

「脱原発を目指す首長会議」の会員になることを求める請願を

自治体首長の第一の責任は「住民の生命財産を守る」ことです。自治体の首長も自らの責任として、原発に依存しない社会をめざし、すみやかに再生可能エネルギーを地域政策として実現することを積極的に進めていかなければなりません。

パタゴニアでは、認定NPO法人環境エネルギー政策所の協力のもと、再生可能エネルギーに関して多くの皆様がお持ちの疑問にもお答えしています。

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