スキーナ・リバーでスチールヘッドをリリースするエイプリル・ヴォキー。Photo: Adrienne Comeau
スキーナ・リバーでスチールヘッドをリリースするエイプリル・ヴォキー。Photo: Adrienne Comeau

ザ・リリース:魚に対する基礎知識と責任ある釣りへの道

By アンディ・ダニルチャック博士   |   2015/04/23 2015年4月23日
スキーナ・リバーでスチールヘッドをリリースするエイプリル・ヴォキー。Photo: Adrienne Comeau
スキーナ・リバーでスチールヘッドをリリースするエイプリル・ヴォキー。Photo: Adrienne Comeau

遊漁(レクリエーショナル・フィッシング)は北米において非常に人気の高いレジャー活動で、我々の社会の幅広い層に普及しており、魚がいる場所ならほぼどこでも行われている。遊漁にまつわる道具や技術も多様で、適した用具一式を選ぶだけでも相当の自由時間と収納スペース、そして資金を費やすことになる。ひとつのルールが万人に適用するスポーツではなく、大部分においては、それこそが魅力なのだと言える。

遊漁の人気や範囲や奥行きを考えると、それにより非常に多種の魚がさまざまな方法で捕獲されているということにもなる。私たちが釣りをする理由の一部はここにある。しかし獲物をキープするために釣る人も、間違った魚種だったり、合法のサイズに満たなかったり、捕獲量の上限に達した場合などは、魚をリリースしなければならない。また、自発的に「キャッチ&リリース」を重視する傾向も盛んになってきている。それは釣った魚をふたたび逃がすことにより、釣りをスポーツとして楽しむと同時に、魚類に与える影響をできるかぎり抑えようというものだ。理論的には「キャッチ&リリース」は持続可能性を高め、環境保全に貢献しているように思われる。放した魚が泳ぎ去っていく様子を目にすれば、その魚はもう大丈夫ということだろうか?

ここで出番となるのが「魚に対する基礎知識」だ。私の親友であるスティーブン・クック博士とコーリー・サスキ博士(私自身と同じようにアングラーから科学者へと転身し、遊漁を研究の主題とする)が10年ほど前に出版した研究論文では、魚にかかるストレスは種によって異なるものの、「キャッチ&リリース」の最善の実践法については、その土台を形成する何らかの原理または共通点があることを強調している。

たしかにソトイワシ、ニジマス、オオクチバスなど、特定の種で実施された「キャッチ&リリースの科学」的なものは、あるにはあったが、物理的および生理的な耐性、またこれらの種が生息する環境はかなり異なるものだ。水中捕食者(サメやバラクーダ)がいる場合におけるソトイワシの「キャッチ&リリース」の最善法のニュアンスは、浅く冷たい渓流にいるニジマスには該当しないだろう。それでも、オオクチバスにとっては捕食が問題となることがある。成魚には問題ではないが、稚魚の場合、産卵床周辺を漂っているあいだに親魚がキャッチ&リリースされたのでは、他の動物から攻撃されやすい状態となる。

人気の高い釣り環境の多くでしっかりとした科学的研究が行われるまで、アングラーが責任ある行動を取り、魚の運命に気を配るために必要なその他の一般的な原理とは何だろうか。釣りという行動を細かい要素に分解して、アングラーが真にコントロールできるものについて焦点を当ててみよう。

ザ・リリース:魚に対する基礎知識と責任ある釣りへの道

写真は魚が釣り上げられたあとの取り扱い、またはリリースされたときの一瞬を捉えているにすぎない。たとえば、魚が完全に水に浸かっている写真が撮られているのなら、扱っているあいだもずっと水に浸かっていたと、安易に思い込んでよいものなのだろうか。責任ある釣りを目指して行動を進めるならば、アングラーも写真家も最善の方法で撮影をするよう促すことが重要だ。Photo: Dave McCoy

ザ・リリース:魚に対する基礎知識と責任ある釣りへの道

エラぶたが完全に水に浸かり、頭部をつかんだ手が口やエラを通る水流を妨げないよう注意する。Photo: Bryan Gregson

釣り上げたあと、魚を空気にさらすことは避けるべきである。これは呼吸を止め、釣り糸と格闘した魚の回復を遅らせることになる。この写真の魚が乾いて見えることにも注意してほしい。また魚の唇でつかむことも避ける。頭部と脊椎に過度のねじれと負担をかけかねないからだ。Photo: Bryan Gregson
釣り上げたあと、魚を空気にさらすことは避けるべきである。これは呼吸を止め、釣り糸と格闘した魚の回復を遅らせることになる。この写真の魚が乾いて見えることにも注意してほしい。また魚の唇でつかむことも避ける。頭部と脊椎に過度のねじれと負担をかけかねないからだ。Photo: Bryan Gregson
水に動きがある場合は魚の頭部を水流に逆らう方向に向けて、口、エラ、エラぶたを通る水の流れを最大限にする。Photo: Bryan Gregson
水に動きがある場合は魚の頭部を水流に逆らう方向に向けて、口、エラ、エラぶたを通る水の流れを最大限にする。Photo: Bryan Gregson

運動
掛かった魚がついにはあきらめてリールで引き寄せられてしまうのはなぜか、と考えたことはあるだろうか。釣り糸に掛かると、魚は運動誘発性のストレスを体験する。このことを否定することはできないし、すべきではない。釣り糸に掛かったときにその張力と闘うため、魚は血中にブドウ糖(グルコース)を放出し、筋肉に燃料を供給して抵抗できるようにする。すべての脊椎動物は、食物を探しているとき、交配相手獲得のために競争するとき、捕食動物から逃げるときなどに、この方法で運動燃料を補給する。長時間にわたる運動、また関連する筋活動も、血中に乳酸を蓄積することになる。これは筋機能に対して雪だるま式の効果をもたらす。人間がレースで走った際、ふくらはぎや腿の筋肉がつるのと同じことだ。釣りであまりにも長く駆け引きをつづけると、血中のブドウ糖と乳酸のレベルを増加させ、リリース後の魚が生理的に回復するのにより時間を要する。あらゆる種の魚において、その種にマッチした釣り具を使用し、極限まで疲れさせるような駆け引きは止めることだ。

釣り針と取り扱い
魚の口や他の体の部分に突き刺さる釣り針の先端が、魚を肉体的に傷つけることは事実だ。「責任ある釣り」の目的は、釣り針による損傷を最小限に抑える方法を見つけることにある。シンプルなひとつの方法は、釣り針の返しをつぶすこと。刺さった方向と逆に返しを引く必要がなくなるため、魚が針に掛かったときの損傷を減らすばかりでなく、全体的な取り扱い時間も少なくなる。バーブレスフック(返しのない針)も、魚が水中にいるあいだに鉗子やプライヤーでつかむだけで、さらに簡単に取り外すことができる。手首をすばやく回せば魚に触れることすらなく針を外せるのだ。また針が魚に深く食い込んでいる場合は、それを掘り出そうとするよりは、釣り糸を切って針をそのままにする方が良いことがいくつかの研究で明らかにされている。バーブレスを推進し、魚に触れずに針を外す技術を学ぶべきである。やむを得ない場合は網や唇グリップの道具も含め、魚を扱うことを軽減するために最大限努力する。釣り針を外せないのなら、釣り糸を切ることだ。

呼吸と空気への露出
魚は口から水を取り込み、エラを通してエラぶたから出すことによって呼吸する。魚によっては口とエラぶたを連動させて水を活発に送り込むものもあれば、口を開けたまますばやく泳ぎつづけ、酸素を豊富に含んだ水がエラを通過するようにするものもある。いずれにせよ水が口から入り、エラを通り、エラぶたから出ていく様子を思い浮かべてほしい。また水が逆方向に流れていくこと、たとえば魚が後ろ向きに移動しても呼吸には何の役にも立たないことを知ることも大切だ。

では今度は、アングラーが魚を釣り上げたときにやることを考えてみよう。魚を水から取り出すと、エラを通して溶存酸素が血中に入ることができなくなる。エラは空中から酸素を取り込むような仕組みにはなっていない。わずかな種においては浮袋で「呼吸」のようなことができるが、概してそれも望ましい方法ではない。

釣り糸の端で運動をさせられたあと、水から上げられることは実質上呼吸を止めることであり、魚にとってはさらにストレスとなる。レースで走ったあとに無理に息を止めさせているようなものだ。魚を空気にさらすことを最小限に抑えるには秘訣がある。ひとつの方法としては、あらかじめ写真を撮る人が指示するということを決めておき、釣った人はカメラの準備が整うまでその魚を水中に入れたままにしておく。とは言っても「責任ある釣り」の目標は、空気への露出を完全になくすことにあるべきだろう。

魚が完全に水に浸かっている理想的なイメージ。このような写真を容易に撮影できる水中カメラも主流になりつつある。Photo: Dave McCoy
魚が完全に水に浸かっている理想的なイメージ。このような写真を容易に撮影できる水中カメラも主流になりつつある。Photo: Dave McCoy
魚を水から上げて撮影するときは、なるべくエラぶたが水に浸かるよう努める。この写真では水が前から後ろ方向に流れていることがはっきりとわかる。Photo: Bryan Gregson
魚を水から上げて撮影するときは、なるべくエラぶたが水に浸かるよう努める。この写真では水が前から後ろ方向に流れていることがはっきりとわかる。Photo: Bryan Gregson

回復とリリース
釣り上げた魚を水中にキープしておくのは良いことか、という質問に対する答えはイエスだ。そして最も重要なのが、水は魚の口から入り、エラを通ってエラぶたから出ていくことで呼吸を最大限に促進させると覚えておくことだ。つまり、魚の口とエラぶた全体が水に浸かっている必要があり、口とエラぶたが動かせないような状態で魚をつかまないよう気をつけなければいけない。多くの種においては片手で魚の体の下部をつかみ、もう片手で尾の付け根をつかむとうまくいく。

運動と取り扱いによってかなりの生理的ストレスを受けた魚は、ヒレの連係動作を乱し、回転したり急潜水したりして、平衡感覚を失うこともある。このような魚はリリースする前に回復させるべきだ。河や小川の場合は、魚を完全に水に浸け、頭部を上流に向かせて呼吸を促進させる(このとき魚を前後に動かさないように:エラに逆から流れ込む水は役に立たないばかりか、魚に危害を加えることにもなる)。魚を静かに支え、口やエラぶたを塞がないよう、魚を強くつかみすぎないように注意しながら、ヒレの動きが協調していることを観察する。湖や淀みの場合は魚を8の字形に動かして呼吸を促す(このときも前進する方向のみに動かすこと)。ボートに乗っている場合はモーターを前進方向でアイドリングさせ、魚の頭部を船首に向けて持つ。場合によっては生け簀を用いて魚を回復させることもできるが、これは魚を閉じ込めることになる。ある程度の水流を起こしたり空気を含ませることも重要だ。特定の種(タイヘイヨウサケやソトイワシなど)では「リカバリーバッグ」の有効性が試されており、リリース前に魚を回復させる道具としての将来性が期待されている。いずれにしても、魚を回復させるときには順方向のみで動かし、ヒレが協調した動きを示し、自力で平衡状態を保ち、積極的に泳ぎ去っていく様子が認められたときに放すということになる。捕食動物(サメ、ワシなど)がさまよっている領域では、可能であれば別の場所で魚を放すことを検討する。

アングラーと魚の両方が写っていながら、魚は完全に水に浸かっているという素晴らしいイメージ。Photo: Dave McCoy
アングラーと魚の両方が写っていながら、魚は完全に水に浸かっているという素晴らしいイメージ。Photo: Dave McCoy
水が魚から滴っており、撮影のためだけに水からすばやく持ち上げたことがわかる。しかしながら、空気への露出は避けるのが理想的だ。Photo: Bryan Gregson
水が魚から滴っており、撮影のためだけに水からすばやく持ち上げたことがわかる。しかしながら、空気への露出は避けるのが理想的だ。Photo: Bryan Gregson
手をエラぶたのうしろに移動し、口やエラぶたを締めつけないようにする。Photo: Bryan Gregson
手をエラぶたのうしろに移動し、口やエラぶたを締めつけないようにする。Photo: Bryan Gregson

釣りによる作用から魚が生理的および肉体的に回復するには何時間もかかることが研究でわかっているが、魚種やコンディションに釣り具をマッチさせること、魚の力が尽きるまで駆け引きを強いないこと、取り扱いを最小限に抑えること、空気への露出を避けることなどにより、魚の回復時間を大幅に短縮できる。こうすることで、魚にそれぞれ自然に復帰するための最良のチャンスを与えることができる。魚が次世代に、そして生態系に貢献し、またいつの日か誰かに釣りを楽しませてくれるように。

この記事は雑誌『This is Fly』第50号に掲載されたものです。創作的な記事、写真、デザイン、美術、音楽を通して、『This is Fly』誌は、次世代フライフィッシングのライフスタイルとカルチャーを確立するものです。無料購読をご希望の方は、ここからメールアドレスをご記入ください。次号発行の際にお知らせいたします。