Worn Wear:新谷暁生氏から届いた着ることについてのストーリー
キースとローレン・マロイが考案したWorn Wearは、キースが長年にわたって使用してきた自身のサーフ・ギアにインスピレーションを受けてはじまった取り組みです。2人はWorn Wearブログをスタートさせ、そこを皆様のお気に入りのパタゴニア製品にまつわるストーリーをシェアする場としました。この取り組みの開始にあたり、イヴォン・シュイナードものちにすべての「元祖」となるフリースについてのストーリーを寄稿しています。今日は日本人としては最初の投稿となる、イヴォンとも親交のある新谷暁生氏によるストーリーをご紹介します。
パフ・ザ・マジック・ドラゴン
新谷暁生、北海道ニセコ
親愛なるパタゴニアへ
1987 年、私はアメリカのパタゴニア本社で大工をした。イヴォン・シュイナードが私をベンチュラに誘ってくれた。前年にニセコを訪れたイヴォンは宿帳に 「better than Colorado snow」と記し、ダイヤモンドCの落書きをドアに残して私の不細工な建物をとても気に入ってくれた。ウッドショップと呼ばれるパタゴニアの店舗デザイン や木工制作を行う仕事場の親方は、今は亡きボブ・ジャレットだった。ボブのアルミボートでカツオ釣りに行き、大きなサメを釣り上げたこともあった。臭くて 食えなかった。私はイヴォンやボブと知り合うことでパタゴニアのファンになった。
冬の雪崩事故防止と夏のシーカヤックガイドを仕事とする 私がウエアに求めるものは、軽さと動きやすさだ。1986年のヒマラヤ遠征で私はシェルド・シンチラを荷揚げやルート工作に使い、1992年のカラコルム でも汎用性に優れたこのジャケットを使った。1980年代にパタゴニアが初めてマーケットに送り出したシンチラと呼ばれるフリース素材や、シェルとの組み 合わせで対候性を高めたシェルド・シンチラ、またキャタピラー(青虫)の愛称で親しまれたダウンセーターやウールアンダーなどパタゴニアの先駆的な取り組 みは、他のアウトドアブランドにも大きな影響を与えた。アムンセンやナンセンの時代と同様、ウールなど天然素材は野外に必要不可欠な素材だ。ウールはその 繊維の特性から濡れても体温を保つ。ダウンもまた体温が伝わる限り、濡れていても羽毛が膨らんで外気を遮断する。パタゴニアのウールアンダーはまだ発展の 余地がある。それは主に素材の耐久性と着やすさの問題だが、ウールセーターとの併用などで私はそれを解決している。私は過酷な条件下で何度もウールに助け られた。だから化繊肌着を使わない。しかしこれは使用条件の問題だ。化繊の利点は多い。
私は冬にダスパーカを使い、夏はパフジャケットを 使う。化繊綿入りのこれらのアウターは軽くて必要十分な機能を持つ。何年も使い続け、かぎ裂きや焚火穴などで原型をとどめていないが、新しいものにはなか なか変えられない。ウエアも靴と同じだ。使い込んだものが良い。ところで最近のパタゴニアは全体にラインが細い。カリフォルニアのスリムなアスリートには 良いのだろうが、手足が短い原人体型の私には腕や胴、腿や尻がやや窮屈だ。ダスやマイクロパフはこの点でも具合が良い。柔らかくて軽く動きやすいからだ。 私のパフはまだ使える。そして持っているだけで安心する。いずれにせよ私はこれからもパタゴニアを使い続けるだろう。
-新谷暁生
『Worn Wear:着ることについてのストーリー』のフィルムもぜひご覧ください。
パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードのインタビューも収めた 本フィルムは、購買行動に対する人びとの狂乱への防御手段であり、Worn Wearはすでに所有しているモノを称賛することへの招待です。
【ビデオ:Worn Wear:着ることについてのストーリー】