ゴムを見直す:プラスフォーム製フリップフロップ・サンダルのリサイクル革命
アウトドアファンの方なら誰でも、沢に寄り道してひと泳ぎしたり、チューブを追いかけて一日過ごしたりしたあと、愛用のサンダルが突然ダメになる、という経験をしたことがあるはず。鼻緒が外れたり、すり切れたり履きつぶしたりして親指の下の底の部分に穴が開いたり…。いずれにしても、「お疲れさま」と声をかけたあとは、ゴミ箱行きが決まっています。生分解可能な素材からできていないそれらは、ゴミ埋め立て地でスペースを取るか、下手をすればいま遊んできたばかりの海に投げ捨てられる、というのがほぼお決まりの運命です。
たしかに、クリエイティブなアップサイクル(ドアストッパーとかハエたたきなんか)で、使い切ったサンダルのそんな結末を多少なりとも遅れさせることはできますが、合成ゴム、発泡剤、エチレン酢酸ビニル(EVA樹脂)、ポリウレタン(PU)といった、一般に普及する石油化学系のプラスチック製のものはほとんど全部、最終的にゴミ処理場に向かうことは避けられません。残念なことに、リサイクル技術が向上している今日においてすら非理想的な幕切れはつづき、私たちの子供、さらにその子供がツケを払わなければならない状況にあります。
そしてそれは今日、カリフォルニア州ニューポート・ビーチ市に本社をおく小規模な新興企業、プラスフォーム社のおかげで、この筋書きは著しく前向きでエコ・フレンドリーな方向に転換しようとしています。
パタゴニアがプラスフォーム社と提携し、ゴミ処理場で終わらないフリップフロップ・サンダルの共同開発に取り組みはじめてから3シーズンになります。そう、メンズ&ウィメンズ・レフリップ、メンズ&ウィメンズ・レフリップ・チップ、ウィメンズ・フリップ・アラウンド、メンズ・フリップサイクルはPLUSfoam.comを通じて100%リサイクルが可能なのです。さらにすごいのは履き比べてみるとすぐにわかることですが、プラスフォームでできたフリップフロップは、他の主流のサンダルに性能上劣る点は何らないということです。
「プラスフォームは、現在出まわっている標準的な素材と本質的に同じです」とプラスフォーム社のブレット・リター氏は語ります。「圧縮性、引裂き強度、耐久性などいずれの面においても、他社製品に対してまったく引けをとりません。唯一の違いは製品のライフサイクルです。しかもEVA樹脂や合成ゴムでは不可能なことをプラスフォームは達成しています。これを人に話してもなかなか信じてもらえないのですが、本当に完全にリサイクル可能なのです」
リター氏が、経営パートナーのケン・ウォング氏、ジェイソン・スタンソン氏と3人でプラスフォーム社を起業したのは5年ほど前のこと。リター氏はこの素材の驚異的にみえる再生機能性について、人びとをひんぱんに納得させなければなりませんが、それは数年前、アウトドア・リテイラーの展示会でパタゴニアのフットウェア・チームとはじめて出会ったときも同じでした。彼は信じない人を説得するトリックをいくつかもっていますが、なかでも最高の技は、家庭用ホットプレートとミキサーを巧みに使った実演でしょう。簡単に説明すれば、プラスフォーム製の中古ビーチサンダルを用意し、それを丸ごとミキサーに入れて砕きます。次によく熱したホットプレートの鉄板の上にカラフルなチップを乗せ、上からプレスして待つこと数分。出来上がったのはなんと、サンダルからすっかり姿を変えて、もとの機能性を完全に取り戻したプラスフォームのパネルでした。ポリエチレン以外の、EVAやポリウレタンをはじめとする類似のプラスチックにはできない技です(ただしポリエチレンは密度特性の点でプラスフォームに劣ります)。
「もちろん製品の実際のリサイクル現場では工業用ミキサーを使用し、加熱と加圧にもかなり違った機械を使用します。でも卓上の模擬実験は、何が可能かということを示すのにもってこいの方法です。そして結構楽しいんですよね」と、何か重大なことを嗅ぎ付けた人の笑みを浮かべながらリター氏は語りました。
もちろんプラスフォームはリサイクル可能という点で比類ないものですが、それでも石油化学製品であることを見過ごせない人も多くいます。しかしリター氏は、問題は私たちが石油化学製品を使うことにではなく、その方法にあると言います。「率直にいえば、石油とプラスチックは私たちの暮らしでかなりスゴイこと、つまり重要な役割を果たすことが可能です。一方利用者側である私たちは、ヒドイ使い方をしています。石油やプラスチックの使い方について、私たちはまったく無責任です」
プラスフォームは適切な管理責任に向けた大きな一歩となります。その進化はプラスフォーム製品(パタゴニアのフリップフロップをはじめヨガマット、バックパックのストラップ、犬のおもちゃ、水泳のビート板、木板床材の代替品などさまざまある)がリサイクル可能というだけでなく、その製造後の工程でも明らかです。フットウェア工場には製造過程で生じた廃材があり余っています。ビーチサンダルや靴底が素材のシートからカットされたあと、ゴムの切れ端などの廃材が大量に残りますが、それらが全部、埋め立て地へ行くか、焼却処分となることを考えてみてください。リター氏はプラスフォームをクッキーの生地になぞらえ、彼らの技術ではこのような無駄が出ないことを即座に指摘します。「私たちはクッキーの生地を作ったのです。切れ端も全部残らず生地に練り込んで、またそれでより多くの製品を作ることができます」と言います。彼によると、プラスフォームは従来の材料と比べて、製造過程だけで廃棄物をおよそ30%カットすることができます。「ちょっと考えてみてください。その事実だけでもフットウェア製造業界変革のために飛躍的な進化をもたらします。それは私たちのリサイクル・プログラムを考慮する以前のことです」
パタゴニアのフリップフロップをとことん履き古したら、リター氏の会社へ郵送するか(パタゴニア・フットウェアが送料を負担します。カスタマー・サービスにお問い合わせください)、または「コモンスレッズ・パートナーシップ」の回収箱(直営店と一部の正規代理店にあります)に入れてください。プラスフォーム社に届いた中古サンダルやスリッパは、まったく新しい商品に生まれ変わります。プラスフォーム社は最近、NASA航空宇宙局と技術提携を結びました。あなたの履き古したサンダルがリサイクルされて、将来、宇宙飛行士のハーネスの一部として宇宙を旅するかもしれません。
リター氏はこう締めくくります。「インセンティブが非常にうまく働くプログラムです。厳密にはフリップフロップはリサイクル分類の7番なので、青色の回収箱へ入れてもらっても問題ないのですが、それすると、たいていの回収業者さんは分別を間違ったと思うだけです」
リサイクル可能なフリップフロップの主旨に賛同していただける方のために、パタゴニアは以下の製品をご用意しています:メンズ・レフリップ、ウィメンズ・レフリップ、メンズ・レフリップ・チップ、ウィメンズ・レフリップ・チップ、ウィメンズ・フリップ・アラウンド、メンズ・フリップサイクル
プラスフォームの商品開発にご関心がある企業の皆様は、プラスフォーム社のウェブサイトをご覧下さい。Plusfoam.com
この記事はパタゴニアの依頼でスチュワート氏に寄稿していただいたものです。