循環型社会の構築をめざして
武蔵野市は人口約14万人、面積10.73キロ平方メートル、全国の市のなかでも第2位の人口過密都市です。しかしながら東京都23区と多摩地区の接点に位置しているため、利便性と自然環境を享受しやすい都市でもあります。市域は狭いながらもコンパクトで利便性の高い都市、緑豊かで良好な住環境が広がる暮らしやすい街として評価されています。
パタゴニアの直営店のある吉祥寺は都内有数の商業・文化都市である一方、駅周辺をはなれると、落ち着いたたたずまいの住宅地が広がっています。近くに井の頭公園があり、テレビや映画のロケ地としても利用されています。現在進めている駅舎の大規模改修は、街の特徴である回遊性の充実につながることでしょう。未来を見据えて既存事業のリデザインや施設のリニューアルをおこない、景観にも配慮した持続可能な魅力ある都市を築いていきたいと考えています。
未曾有の大災害となった東日本大震災では、当市でも震度5弱という市制はじまって以来の大きな地震を体験し、より安全で安心な街づくりの必要性を再認識したところです。建物の耐震・不燃化の促進、地域の高齢者・障害者の安否確認、帰宅困難者対策、避難支援の充実などの取り組みを行うとともに、より実践的な地域防災計画を策定しました。首都直下型大地震の起こる確率は、今後30年以内に70%以上と言われています。大地震は起きるものとの前提で、地域社会全体でさらなる防災・減災の街づくりを進めています。
東日本大震災にともない発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、私たちは原発事故のリスクの大きさを認識しました。原発事故周辺地域の避難区域では、住民の帰宅が困難になり、放射線の広範囲に渡る拡散は多くの地域で住民に不安を与えています。原子力発電は二酸化炭素の発生の少ない地球環境に優しい発電と言われてきましたが、事故が発生した場合、私たち人類のみならず、生物全体の生息環境にも大きく影響し、地球環境をも破壊することになる極めてリスクの高いものと言わざるを得ません。原子力発電に頼らない社会の実現を早期に目指すべきと考えます。
このような考えから私は、〈脱原発をめざす首長会議〉に参加しています。この会議は、「新しい原発はつくらない」、「できるだけ早期に原発をゼロにする」ということを多方面に働きかけることを目的に活動しています。原発に頼らない社会の実現を目指し、アピールしていくとともに、同時に省エネの推進や新エネルギーの導入、分散型エネルギーの検討など、自治体としてできることを進めていこうという方針を掲げているのです。
武蔵野市でも原発に頼らない社会の実現に向けて自治体としてできることを研究、実行しています。たとえば、市庁舎や市立小中学校に太陽光発電システムの設置を順次進めています。また市民を対象として、住宅用太陽光発電システムや太陽熱温水器、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどの設置費用の助成をしています。市内の中小事業者には、設備の省エネ化やコスト削減につながる省エネ診断とアドバイスなどの支援を行っています。世界では、エネルギー供給源としてのシェールガスによるエネルギー革命が現実になりつつあり、今後エネルギー環境は大きく変動する可能性があります。一方で、地球環境にやさしい低炭素型の街づくりも必要であり、再生可能エネルギーの普及などによる分散型エネルギーシステムの導入による、「エネルギーの地産地消」の推進が求められます。自治体ができる取り組みとしては、節電をはじめとする省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの導入やエネルギーのスマート活用などがあります。
武蔵野市は今後、公共施設や周辺施設とのエネルギーのネットワーク化など、地域・地区単位でのスマートシティなどの研究に、産学との連携で取り組んでいきます。現在、学識経験者・民間事業者・市民で構成する「新たなエネルギー活用検討委員会」を設置し、同委員会からの提言を受けて、スマートメーターの普及にともなう新たなエネルギー活用の検討や建て替えを予定しているクリーンセンター(ごみ焼却場)における新たなエネルギー活用計画などを進めているところです。また、貴重な水源となる地下水の涵養のために、市域全体での雨水の地下浸透の促進や多摩地域の森林保全を支援し、水循環型都市形成も図っていくつもりです。
私たちのライフスタイルは、過剰なエネルギー消費型から、環境に配慮したスマートなライフスタイルにシフトしていくことが必要です。利便性のみを追求するのではなく、ごみ減量やリサイクルを促進し、省エネルギーに取り組みながら、地球に優しい循環型社会の構築をめざしていくことは可能なことであり、私たちの今後の生活のためにも、いまもっとも求められていることです。
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