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固定価格買取制度とグリーン電力証書と電力自由化

竹村 英明  /  2012年7月23日  /  読み終えるまで9分  /  アクティビズム

竹村 英明 (エナジーグリーン株式会社取締役副社長)

固定価格買取制度とグリーン電力証書と電力自由化

自然エネルギーの電気を高価格で買い取る固定価格買取制度が7月1日からはじまりました。自然エネルギーの電気は、種別によって違いはありますが、おおむねこれまでの倍もしくは3倍の価格で20年間電力会社に買い取ってもらえるため、自然エネルギー発電の事業者は長期的な事業計画が立てられるようになりました。この制度により、今後新設される自然エネルギー発電所は基本的に全量を電力会社に売電することになり、よってグリーン電力証書化できる環境価値は新規の設備からは生まれないのではと思われている方もいます。

そう思われるのも無理はありません。なぜなら固定価格買取制度は、電力だけでなく、環境価値も全量を電力会社に渡してしまうシステムだからです。グリーン電力証書は自然エネルギーの「環境価値をお届けする商品」なので、環境価値がすべて電力会社に渡るということは、グリーン電力証書として商品にする分の環境価値はまわってこなくなるということになります。そればかりか、現在既設の自然エネルギー発電設備も、変電設備の交換などの条件をクリアし、買取価格の減額を受け入れれば、固定価格買取制度に移行することができることになりました。風力発電やメガソーラーなどの自家消費がない設備は、これによりほとんどが固定価格買取制度に移行する可能性があります。

さあ、グリーン電力証書は消滅か…というと案外そうでもないのです。

グリーン電力証書/「えねぱそ」はなくならない
固定価格買取制度にともない、グリーン電力証書の供給ができなくなってしまうということはありません。もともとグリーン電力証書になっているのは、自家消費が相当量ある自然エネルギー発電設備のつくり出す環境価値です。全量売電や自家消費が少量だった施設の環境価値は、グリーン電力証書になっていないのです。グリーン電力証書の仕組みでは、その発電施設の自家消費分の電気の環境価値を買い取って証書化しています。電力会社に売電している分は環境価値も一緒に電力会社に売っているため、「環境価値」は自家消費分にしか残っていないからです。また自家消費量の多い既設の施設は、非常用電源の効果もかねて設備を設置しています。ところが全量売電に移行したら非常時にはまったく使えなくなってしまうだけでなく、送電線との接続方法を変更するためのコストもかかります。したがって、移行を考えている施設はほんの少数です。じつは同じことが新規設備にもいえます。東日本大震災以降に自然エネルギー発電が注目されているのは、災害時に独立電源として使えるからです。固定価格買取制度ではそれをあきらめなければなりません。よって、いくら高く価格を設定されようとも売る気はないという施設もあるのです。とくに中規模の数百kW級の施設では、そういう選択が多くなるように思います。

ですから、グリーン電力の供給が急に足りなくなることはありません。むしろ需要側の拡大がまだまだ当面の課題です。

固定価格買取制度で自然エネルギーは増えるのか
鳴り物入りでスタートした固定価格買取制度ですが、よくよく見ると問題山積でのスタートとなりました。優先接続などのルールは法律の条文には書かれていても不徹底で、風力発電の送電線への接続はあいかわらず抽選がまかり通っています。送電線との連系コストも自然エネルギー事業者が負担しなければなりません。買取価格は高くはなりましたが、じつは何も変わっていないのです。送電線につなげなければ、電気を買い取ってもらうことができないのは明らかです。日本では風力発電への障壁はあいかわらず大きいのが現実です。世界では供給電力の20%を風力発電が占めるという欧州の実例があるのに対し、日本はいまだに6%が限界として風力発電の送電線への接続を拒んでいます。地熱も地元理解の問題、小水力は水利権の問題、またバイオマスは森林保全とのバランスと、それぞれが問題を抱えています。太陽光発電も、町中では電圧抑制という問題を抱えています。電圧抑制とは、たくさんの太陽光発電ができると、それぞれの発電所が電力会社からの電気の電圧よりも高い電圧で電気を送り出すため、地域全体の電圧が高くなり、逆流する形でパワコンの停止機能が働いてしまうことです。ガンガンに太陽が輝いているのに、パワコンは止まっていて発電していない。あれ?なんで?みたいな現象です。

送電線への連系コストは、総括原価方式の電力会社負担とすべきです。総括原価方式とは、発電所建設や送電網建設、配電やメンテナンス、営業費用など、かかった経費をすべて「総括原価」に算入して集計し、その3%を利益とすることができる制度です。経費節減をして「総括原価」を減らすと利益も減ってしまうため、電力会社は基本的に経費節減努力をしません。より高いものやムダなものを買えば買うほど儲かる会社なのですから、連系コストの肩代わりなどはわけないはずなのに、自然エネルギー側に押し付けているのです。

こんなふうに考えると、おそらく固定価格買取制度により目に見えて伸びる自然エネルギーは、郊外型メガソーラーくらいではないでしょうか。まだまだ前途多難です。

発送電分離と電力システム改革が近づく
山積した問題の解決には、まず送電線の運用とシステムの改革が不可欠です。自然エネルギーを優先接続し、きちんと発電を保証できるようにすることです。電気を送るための送電網とその管理は非常に重要なシステムですが、そのシステムが古くなり、制度疲労を起こしていることが、日本で自然エネルギーの拡大を阻んでいるのです。これを治療するのが「電力システム改革」です。さすがに政府内部でも検討が進められ、電力システム改革検討委員会から、
(1) 一般家庭までの電力自由化
(2) 総括原価方式の撤廃
(3) 電力卸売規制の撤廃
(4) 法的分離か機能分離かによる発送電の分離
(5) 送電線の広域運用機関の設立
などが、「改革」の方針として7月14日に公表されました。いろいろなものが、今後3年くらいをメドに動き出します。日本では、発送配電一体型の電力会社が地域ごとの一社独占というかたちになっています。送電線網という点では地域の境目をなくし、全国一体型にする方が運用しやすくなり、自然エネルギーの利用比率も上がります。逆に発電、送電、配電は分割をし、発電と配電には競争原理を入れる方がコスト削減や細やかなサービス向上につながります。送電網が独立してひとつの会社になると、誰でも平等な条件で送電網を使えるようになります。

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いまこそ重要な「えねぱそ」の役割
発送配電分離と全国一体型送電会社の時代がやってきて、すべての自然エネルギーについて電気と環境価値を一緒に購入できるようになると、グリーン電力証書の位置づけは、いわば「電気の証明書」に変わります。今年から生活クラブが秋田県にかほ市の風車の電気を購入しますが、実際には、風車の電気そのものは送電線の途中でどこかに吸い込まれ、生活クラブまで届くのは多様な電源の混じった電気です。そこで環境価値をグリーン電力証書として「にかほの風力」から生活クラブは受け取っています。「環境価値+電気そのもの」が自然エネルギーの電気ですから、グリーン電力証書がそれを証明していることになります。「えねぱそ」も同じことになるでしょう。「エナジーグリーン」というのが電気のブランドになるかも知れません。でもそういう大胆な変貌を遂げるためには、皆様が「えねぱそ」にパワーを与えてくださることが必要です。電力システム改革を進めるためにも、「えねぱそ」の役割は重要です。なぜなら、自由化や発送電分離がバラバラに行なわれても、自然エネルギーが増えることにはならないからです。

たとえば、電力が一般家庭まで自由化されても、自然エネルギーの電気を売ることのできる電力会社が存在できなければ意味がないでしょう。発送配電分離がされても、自然エネルギーなんてつなげないよという会社が送電網を管理したのでは、何も変わらないでしょう。発言も行動もせず、ただ待っていてもダメなのです。「自然エネルギーを増やす」ことが軸にならければ、この改革は骨抜きにされてしまう可能性大です。自然エネルギーを増やしてほしいということをどうやって伝えましょうか。たとえば、いま行なわれているエネルギー基本計画へのパブリックコメントに意見を出すというのもひとつです。もっと簡単にできるアクションが「えねぱそ」購入です。「えねぱそ」の利用者が増えることは、自然エネルギーの電気が必要というアピールになります。需要側から「供給電力の中に自然エネルギーを増やしてほしい」という発言/行動、それが「えねぱそ」です。電力システム改革の方向性を決める力になるでしょう。

日本はまだ電力自由化は達成されていませんが、「えねぱそ」はあります。電力自由化は実現していなくとも、自然エネルギーを選ぶことができているのです。

それってスゴいことではないでしょうか?

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パタゴニアの直営店およびオンラインショップでは個人向けグリーン電力証書「えねぱそ」を販売しています。

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また、札幌北ストアでは7月26日(木)に竹村氏を招いてトークイベントを開催します。「えねぱそ」の仕組みや役割、自然エネルギー普及推進に向けたお話をしていただきます。お問い合わせ/ご予約は札幌北ストアまで。詳細はパタゴニアウェブサイトのストアイベントページをご覧ください。

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